イセザキ書房のこだわり
当店はブックカバーの「かけかた」にこだわります。そのわけは……
題して、「山本周五郎からカバーのかけ方をを学んだ日」
私が書店を始めて5年も経たない頃、黒いマントに下駄履き姿の60才になるかならないかの男性客によく来ていただいた。
いつも一寸イキな中年女性と共に。
ある日「今度、講談社から出た《日本》(月刊誌)はよく売れていますか?」と問われた。
私は正直に「あまり売れてはいません」と答えた。
またある日、「本を一冊注文したいんだが」と云われた。
注文台帳に記入しながら「お名前は?」と聞くと、「山本です」と答えたので、この客の顔をまじまじと眺めた。
いつか雑誌に出ていた山本周五郎そっくりではないか。
でも私は「はい、分かりました。3日程で入荷いたします」と云って受注した。
そしてその本をとりに来られた時「カバーをかけましょうか?」と云って、私流に本にカバーをかけた。
すると、「本屋さん、まだ若いから教えてあげましょう。本のカバーはね、こうしてかけるんですよ」
と云って、ご自分でサラサラサラと手品みたいにピシッとしたカバーかけを見せていただいた。
うわぁーっと私が驚いていると、「これからこうしてかけてあげると読者は本をいつまでもきれいに読めますよ」と云われてしまいました。
私は思い切って「もし間違っていたらごめんなさい。山本周五郎さんでいらっしゃいますか?」と聞くと、「ハイそうです」とふっと笑って帰られた。
それから山本周五郎の単行本は平台に積み上げて沢山売れるようにして売った。
私も読んでみると時代小説だけど恵まれぬ心優しい庶民が主人公で人間味あふれる読み物で面白い。
よく売れた。
聞けば山本周五郎は間門の旅館が書斎であったらしい。
当時は大書店もなく私の店をとてもよく利用して頂いた。
何年間くらい足を運んでいただけただろうか。それから40年以上も経った今も、山本周五郎式のカバーをかけて読者に渡しております。
全国の書店でもこの方法をとっている店はあまり無いだろうと思いますが、私はずーっと続けます。
その方法を参考までに写真にとって見ました。どうぞご覧下さい。ご来店頂いたお客様には私がレジにいる限りこの方式でおかけいたします。
イセザキ書房 店主 佐藤智子
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